if I was は間違い?
実会話では were より3.5倍多かった
「仮定法では was ではなく were を使う」——学校でそう習います。では実際の会話ではどうなのか。日常会話が多い7ジャンルの動画76本から、if + 主語 + was / were の形を27件すべて拾い、1件ずつ文脈を読んで分類しました。結果は、参考書のルールとかなり違いました。
まず参考書のルール
現在の事実に反する仮定(仮定法過去)では、主語が I や he でも were を使う——これが規範のルールです。If I were a bird(もし私が鳥だったら)や If I were you(もし私があなたなら)が定番の例文として出てきます。
一方で if I was は、「過去に実際にそうだったかもしれない」場合に使う、と説明されることが多い形です。
ところが実会話では was が64%だった
27件のうち、「〜かどうか」を表す名詞節の if が5件ありました(後述)。これを除いた仮定法の22件が今回の対象です。
was が were の1.75倍。ただし、ここからが本題です。were の8件は中身が2つに割れていました。
| 形 | 件数 | 中身 |
|---|---|---|
| was | 14件 | ふつうの仮定法。話題も場面もばらばら |
| were to | 4件 | 別構文。「仮に〜するとしたら」(was に置き換わらない) |
| be動詞の were | 4件 | 全部が同じ言い回し(後述) |
were to を除くと、be動詞の was 14件 対 were 4件で3.5倍。参考書が「were を使え」と言う、まさにその形が少数派でした。
| If it was up to me, I'd start way earlier. | 私に任されていたら、もっと早く始めるのに(雑談) |
| I'd probably say yes if I was in your position. | あなたの立場だったら、たぶん引き受けると思う(街頭) |
were の4件は、全部が同じ言い回しだった
ここが今回いちばん面白いところです。be動詞の were 4件を開いてみると、4件とも「if there were 〜」という同じ形でした。しかも2本の動画で、インタビュアーがほぼ同じ質問を繰り返しているものです。
| If there were more benches around here, it'd be perfect. | この辺にベンチがもっとあれば完璧なんですけどね(街頭) |
つまり were は「決まった言い回しの中でしか出てこなかった」ということです。話し手が自由に文を組み立てる場面では、出てきたのは was のほうだけでした。
※ 4件が同一表現に偏っている点は、サンプルの弱さでもあります。母数22件は決して大きくないので、「were は絶対に使わない」ではなく「自由な発話で were が選ばれる場面は見つからなかった」と読んでください。
if I were you は1件もなかった
参考書の看板例文である If I were you(もし私があなたなら)は、動画76本で0件。念のため if I was you も探しましたが、こちらも0件でした。
| 形 | 件数 |
|---|---|
| if I were you | 0件 |
| if I was you | 0件 |
| if I were(were to を除く be動詞) | 0件 ※ be動詞の were 4件は主語がすべて there |
そしてbe動詞の were が出てきた4件は、主語がすべて there でした。「もし私が〜なら」と自分を仮定する形で were が選ばれた例は、76本のなかに1件もなかったということになります。
were to は「もし」ではなく「仮に〜するとしたら」
were 8件のうち4件を占めた if + 主語 + were to + 動詞の原形。これは仮定法未来と呼ばれる別の形で(If S were to do 〜)、be動詞の were とは役割が違い、was に置き換えることはできません。
| If I were to pick just one, it'd be the ramen place by the station. | 仮にひとつだけ選ぶとしたら、駅前のラーメン屋ですね(街頭) |
| If he were to bring it up again, I'd just be honest about it. | 仮に彼がまたその話を持ち出したら、正直に言うと思う(対談) |
これから起こることを仮に想定する形で、丁寧さや距離感を出す働きがあります。「if I were」を見たら、うしろに to があるかどうかを先に確かめてください。あれば別構文です。
そもそも「もし」ではない if がある
集計から外した5件は、「〜かどうか」を表す名詞節の if でした。know・remember・be sure などの目的語になる if で、「もし」とは訳せません。
| I couldn't tell if the timer had already started. | タイマーがもう動いているのか分からなかった(ゲーム) |
この if は was / were の選択とは無関係です。見分け方は if が名詞節か副詞節かの見分け方 で詳しく扱っています。
結局どう使えばいいか
- 会話なら was で問題ない。実データでもそちらが多数派だった
- 英作文・試験・論文・ビジネス文書では were。規範のルールとして評価される場面がある
- were to は別物。「仮に〜するとしたら」で、was には置き換えない
- if I were you は「使ってはいけない」わけではない。ただし実際の会話で自然に出てくる形ではなかった
同じ were のルールは I wish のうしろでも習いますが、そちらはさらに徹底していて、I wish I were は76本で0回でした。
※ 今回の集計対象は if + 単数主語(I / he / she / it / that / this / there)+ was または were の27件です。you / we / they はもともと were しか取らないため、was と were の選択が起きず、対象外としています。