I wish I could の意味は?
実会話76本で6回、誘いを断る返事では0回
「誘いを断るときは I wish I could, but... と言えば angry にならない」——そう習った人は多いはずです。では実際の会話でどう使われているのか。7ジャンルの動画76本から I wish を31件すべて拾い、1件ずつ文脈を読みました。結果、いちばん多い形であると同時に、教わる使い方とはずれていることが分かりました。
意味:can ではなく could を使う理由
I wish のうしろは、実現しないことを言う形になります。だから can ではなく could。「できたらいいのに」と言いながら、できないことを同時に伝えているのがこの形です。
| I wish I could stick around a bit longer. | もう少し長くいられたらいいんだけど(雑談) |
| I wish I could say more about it. | もっと話せたらいいんだけどね(雑談) |
うしろに来るのは動詞の原形です。I wish I could stay / tell / see のように続けます。
実データ:I wish のなかで最多の形だった
I wish 31回のうしろに来た形を数えると、could が8回でいちばん多く、そのうち主語が I のもの(I wish I could)が6回でした。
参考書の看板例文である I wish I were 〜 が0回だったのに対し、could の形だけが繰り返し使われていました。詳しくは I wish I were は使わない? にまとめています。
ところが「誘いを断る返事」としては0回だった
ここが今回いちばん意外だったところです。相手の誘いや依頼に対する返事として使われた例は、6回のなかに1件もありませんでした。
6回のうち2回は直後に but が続いていますが、どちらも断りではなく自分の事情の説明でした。ひとつは配信を抜けるときの挨拶、もうひとつは体調で遊べなかったことへの心残りです。「誘われて、できないと返す」場面は1件もありません。
| 実際に出てきた場面 | 形 |
|---|---|
| 配信を最後まで見ていたいが時間が来た | I wish I could + 動詞 |
| 中の様子を見せたいが見えない | I wish I could + 動詞 |
| あのときもっと一緒に遊べればよかった | I wish I could have + 過去分詞 |
| またあれをやれたらなあ(回想) | I wish I could + 動詞 |
つまり I wish I could は「相手に返す言葉」ではなく「独り言に近い表現」として使われていました。断りの決まり文句として覚えると、実際の使われ方とはずれます。
場面がはっきり偏っている
それを裏づけるのがジャンルの偏りです。I wish I could が出てきたのは雑談配信・対談・スタンダップコメディの3ジャンルだけ。街頭インタビュー18本・接客15本・厨房内会話7本・ゲーム配信11本、あわせて51本には1回も出てきません。
| ジャンル | I wish I could |
|---|---|
| 雑談配信・対談・スタンダップコメディ | 6回・5本 |
| 街頭インタビュー(18本) | 0回 |
| 接客(15本) | 0回 |
| 厨房内会話(7本)・ゲーム配信(11本) | 0回 |
接客15本に0回というのが決定的です。断り文句なら、いちばん出てくるはずの場面です。この形が生きるのは、相手とやり取りしている場面ではなく、自分の気持ちを語っている場面だと分かります。
※ 母数は6回と小さいので、「断りには使わない」と言い切れるものではありません。確実に言えるのは「誘いや依頼への返事として使われた例は76本のなかに現れなかった」ことと、「接客の場面には1件もなかった」ことです。
過去を悔やむなら I wish I could have
6回のうち1件は、I wish I could have + 過去分詞の形でした。「あのとき〜できていればよかった」と過去のことを悔やむ言い方です。
| I wish I could have joined that trip. | あの旅行に参加できていたらよかったんだけど(雑談) |
could + 動詞の原形なら今のこと、could have + 過去分詞なら過去のこと。ここが切り替えのポイントです。
主語を変えると意味が変わる
could の8回のうち2回は、主語が I ではありませんでした。I wish you could 〜 は「あなたにも見せてあげたい」、I wish he could 〜 は「彼に見せてやりたい」という意味になります。
| I wish you could smell this from there. | そっちからこの匂いを嗅げたらいいのに(雑談) |
| I wish my old teacher could see this. | 昔の先生にこれを見せてやりたいよ(スタンダップ) |
どちらも「相手にこの状況を共有できないのが残念だ」という気持ちを表しています。
似た形との使い分け
「〜だといいな」と言いたいとき、実際の会話で圧倒的に多いのは I hope です。
- I hope 〜=これから実現しうること。会話ではこれが基本(89回)
- I wish I could 〜=実現しないと分かっていること(6回)
- I'd like to 〜=これからやりたいこと(12回)
- if only 〜=I wish と近いが、より強い後悔(4回)
結局どう使えばいいか
- 「できたらいいのに」と自分の心残りを言うときに使う。実データの6回はすべてこの使い方だった
- 断りの決まり文句としては覚えなくていい。誘いへの返事として使われた例は0回、接客の場面にも0回
- 過去のことは I wish I could have + 過去分詞。今のことなら動詞の原形
- これから実現しうることなら I hope。会話ではこちらが約3倍多い