I wish I were は使わない?
実会話76本では0回だった
仮定法を習うとき、必ず出てくるのが I wish I were 〜 です。「主語が I でも were を使う」というルールと、I wish I were a bird のような例文はセットで覚えている人が多いはずです。では実際の会話ではどうなのか。7ジャンルの動画76本から I wish を31件すべて拾い、1件ずつ文脈を読んで分類しました。
まず参考書のルール
現在の事実に反する願望を言うとき、I wish のうしろは過去形になります。be動詞の場合は主語が I や he でも were を使う——これが規範のルールです。
| I wish I were taller. | もっと背が高ければいいのに |
| I wish I were a bird. | 私が鳥だったらいいのに |
この were は仮定法過去と呼ばれる形です。ところが、この形が実会話にどれだけ出てくるかを数えた資料はほとんどありません。
実データ:I wish は31回、そのうち be動詞は2件
動画76本に wish は62回出てきます。このうち I wish の形は31回・17本・5ジャンルでした。その31回のうち、うしろに be動詞が来たのは2件だけです。
| 形 | 件数 |
|---|---|
| I wish I were | 0件 |
| I wish I was | 0件 |
| I wish + 主語 + were(主語は that) | 1件 |
| I wish + 主語 + wasn't(否定形。主語は I) | 1件 |
つまり、be動詞で状態を言う形そのものが、31回中2件しかありませんでした。そして「I wish I were 〜」という形は1件もありません。
were は出てきた。ただし主語は I ではなかった
唯一 were が使われた1件は、主語が that でした。人の話を聞いて「それが自分だったらなあ」と言う場面です。
| You already got tickets? I wish that were me. | もうチケット取れたの? それが自分だったらなあ(雑談) |
逆に主語が I のときに使われていたのは was のほうで、しかも否定形でした。
| I wish I wasn't so tired today. | 今日こんなに疲れていなければよかったのに(雑談) |
were が選ばれたのは主語が that のとき、was が選ばれたのは主語が I のとき。件数は少ないものの、この向きは if 節で数えた結果とも一致します。仮定法の if 22件では was が14件・were が4件で、主語が I の be動詞は was 側に寄っていました。
では I wish のうしろに何が来ていたのか
be動詞が来ないなら、何が来ていたのか。31件を数えると、could が8回で最多、次が had の4回でした。
並べてみると傾向がはっきりします。実際に使われていたのは「できない」「持っていない」「知らない」を言う形で、「自分が〜という状態だったら」と状態を仮定する形はほとんど選ばれていません。
| I wish I could stick around a bit longer. | もう少し長くいられたらいいんだけど(雑談) |
| I wish we had a decent scale in here. | ここにまともなはかりがあればなあ(雑談) |
| I wish I knew the answer to that. | その答えを知っていたらなあ(街頭) |
could がいちばん多い理由と使い方は I wish I could の意味と使い方 にまとめています。
「うしろは必ず過去形」も、実会話では崩れていた
参考書は「I wish のうしろは過去形」と教えます。ところが実データには、現在形の can が続く形が2回ありました。
| I wish I can join them next time. | 次はいっしょに参加できたらいいな(雑談) |
| I wish we can get through this part. | ここを抜けられるといいな(ゲーム) |
どちらも「実現しないこと」ではなく「これから起きてほしいこと」を言っています。本来なら I hope を使う場面で、I wish が使われている形です。数としては2回なので例外的ですが、規範のルールが会話では必ずしも守られていないことは確認できます。
そもそも仮定法ではない I wish もある
I wish you 〜 の形は、仮定法ではなく「〜を祈る」という別の使い方です。実データではI wish you 4回のうち3回がこちらでした。
| I wish you all the best with the new place. | 新しい場所でのご活躍を祈っています(雑談) |
うしろが名詞(all the best / happiness / luck)で終わるのが目印です。うしろが〈主語+動詞〉なら仮定法、名詞だけなら祈願と分けられます。
また、返事として I wish. だけで使う形も1回出てきました。「そうできたらねえ(でも無理)」という軽い否定の相づちです。
そして I wish 自体、思ったほど使われていない
最後にもうひとつ。I wish は31回ですが、I hope は89回出てきます。約2.9倍です。
さらに、I wish はジャンルが偏っています。出てきたのは街頭インタビュー・ゲーム配信・雑談配信・対談・スタンダップコメディの5ジャンルで、接客15本と厨房内会話7本、あわせて22本には1回も出てきません。お店や仕事の現場ではまず使われず、自分の気持ちを語る場面の表現だと分かります。
※ 31回のうち10回は1本の動画(雑談配信)に集中しています。お祝いの配信で I wish you 〜 が繰り返された影響です。母数は大きくないので、割合よりも「I wish I were が1件も出てこなかった」という事実のほうを重く見てください。
結局どう使えばいいか
- 会話で「〜だったらいいのに」と言うなら、まず I wish I could。実データで最も多かった形
- I wish I were は間違いではないが、会話で自然に出てくる形ではなかった。試験・英作文では were が安全
- 実現しうることには I hope。会話ではこちらが2.9倍多い
- I wish you + 名詞は仮定法ではなく祈願。別物として覚える