比較級で more を付ける単語は?
音節の数で決まる見分け方
「3音節以上は more」と習っても、文字数で数えると境目が合わず、どこで切り替わるのか分からなくなります。数えるのは文字ではなく音節です。ここでは -er 側に実際どんな語が来るのか、どこが例外なのかを、日常会話が多い7ジャンルの動画76本の実データで確認していきます。
大前提:3音節以上の形容詞・副詞は more
比較級の作り方は、語の音節がいくつあるかで決まります。3音節以上の形容詞・副詞には前に more を付け、-er は使えません。実データでは more + 形容詞 の形が111回出てきて、このときの more は100%が副詞として働いていました。
| They seem more confident than we are. | 彼らは私たちより自信がありそうだ |
| This is more important. | こっちのほうが大事だ |
confident(con-fi-dent)も important(im-por-tant)も3音節です。文字数ではなく音節で数えると、境目がはっきりします。なお more そのものは、動画76本中61本に616回出てきます。比較級を作る働きだけでなく、I want more. のように単独で使う形も含めた数です。
-er になるのは短くて日常的な語
では -er のほうは実際にどの語が使われているのか。10本以上の動画に出てきた語を並べると、次のようになりました。
later・longer・older・younger・faster——並ぶのは1音節か2音節の語ばかりです。しかもどれも日常でよく使う語で、more が付く語とは顔ぶれがはっきり違います。
※ younger のように世代の話題の動画が1本あると、その中で回数が伸びます。回数より本数とジャンル数のほうが「日常でよく使う」の目安になります(上の数字は本数順)。
口語では2音節以下でも more を付ける
音節のルールから外れる形もあります。2音節以下でも more を付けて使う語が口語には存在し、現代ではそちらのほうが使われるようになっています。代表が more fun です。「何文字以上」という基準を探しても答えが出ないのは、音節で決まるうえに、こうした揺れもあるからです。
副詞に more を付けることはほとんどない
意外に思われるところです。more + 2音節以下の副詞という組み合わせは使われません。さらに more + 3音節以上の副詞も、76本中わずか8件しか出てきませんでした。内訳は effectively(2回)・slowly・quickly・confidently・regularly・casually・ethically です。理由は単純で、長い音節の副詞そのものが日常会話であまり使われないから。一方で more + 3音節以上の形容詞は大量に出てきます。
なぜ more で比較級を作るのか
ここまでが現代のルールです。ではそもそも、なぜ -er と more の2通りがあるのか。古英語の時代、比較級は-er だけでした。変わったのが1066年のノルマン征服です。
フランス北部のノルマンディー公がイングランドを征服した出来事で、これ以降、イングランドの支配層はおよそ300年にわたってフランス語を話しました。その結果、中英語の初期(約1175年)に more が登場します。ちょうどフランス語系の外来語が大量に入ってきた時期でした。その more は、まず beautiful・important のような長い外来語で使われ、そこから広がっていきます。
一方で本来の英語は -er のまま変わりませんでした。こうして「長い語には more」という形が定着します。冒頭の音節のルールには、こういう背景があります。
出典:González-Díaz (2006) "The Origin of English Periphrastic Comparatives", English Studies 87(6)/González-Díaz (2008) English Adjective Comparison: A Historical Perspective(第3章 French influence)/Mustanoja (1960) A Middle English Syntax。迂言比較の初出は OED で c.1175。